自転車ブームと日本の道路事情について。
昨今の自転車ブームにより自転車に関わる事故が増加しているらしい。そのため警察などマナーや法令遵守を呼びかけているが、車の違反と同じで完全に取り締まれるものでもない。
確かに我が物顔で夜間無灯火で歩行者の傍を走り抜ける様は目にあまる。またイヤホンをつけて走っていたり、携帯電話で話しながら運転している者もいる。あれは確かに危険だ。もっとも昔から並列走行や暴走自転車も多かった。かく言う僕も学生の頃に身に覚えがあり、反省すべき点があるので偉そうに言える立場ではない。
しかしながらこれまでの日本の道路整備が、車優先の法整備と道路敷設を続けてきた結果に起因する面もあると思っている。弱者であるヒト、特にお年寄りや子供たちに安全な道路整備がなされているとは言い難い。ましてや自転車を配慮したところが無い。子供でも自転車でも出会い頭に注意を促されても、徐行すべきところで徐行しない車は多い。更には歩行者に対して文句や怒鳴るドライバーもいる。その反面自動車は、通勤時間帯など渋滞の激しい道路周辺では、狭い生活道路へ迂回し、徐行もせず次々となだれ込む危険な地域もある。そんな道路の多くは通学に使われるスクールゾーンであったりする。そんな不備の多い道路状況で、一方的にサイクリストの非だけを責めるのはおかしい。
実は82年頃にも自転車、サイクリングのブームがあった。月刊サイクルスポーツや別冊本などでその特集記事が多く組まれ、旅の行程に関する投稿記事など僕は大いに参考とし、ページに穴が空くぐらい読みふけったものだ。
そんな当時も自転車専用の道路の設置を求める動きがあり、歩道を一部自転車専用レーンとして区分し設置されるなど幾多の試みもあったが、その多くが自転車置場と化し本来の機能が果たされなかった経緯がある。多分何処もかしこも似たようなものだったと思う。
もっとも道路交通法上は自転車は軽車両の位置付けであるため、本来車道の左側を通行すべきだが、違反取締りの罰則規程がなく、また子供や主婦が車道を走るには危険が大きく伴うため強制されるものではなかった。また今でこそ女性も車を運転するが、当時はそんな女性は珍しく、スーパーよりもまだまだ街の商店街も活気があり、今と同様に考えるには些か事情が違う気がする。それに車道の路側帯はガラスの破片や釘などが多く、安全に走行できるものではなかった。
さらに80年代前半にはスクーター、いわゆる"原チャリ"の流行が始まり、それまでスーパーカブ等の商用の原付バイクが主流だったところに、お買い物やパートに向かう主婦層などのスクーターが多く道路に"乱入"したため、道路は百花繚乱の如くの有様で、間違っても自転車が道路を走行するなど考えられなかった。
そういった状況もあり、当時サイクルスポーツ誌でも欧州のサイクル天国としてオランダでの自転車事情を紹介し、サイクリング協会など自転車専用道路の整備を訴えていたが、幹線道路には影響の少ない河川沿いや廃線を利用した郊外のサイクリングロードの整備など形を変えて(?)整備されていった。
あれから30年が経つが、この国の道路事情は全く変わっていない。つまりこの国の政策というのは、経済活動優先の社会整備と都市開発が国や地方自治体の重要な方針であり、結果車優先の社会なのだ。そのためひき逃げや飲酒運転が後を絶たないのは、このような道路事情と都市計画のあり方に問題があるのだと思う。
また人や自転車に対して横柄な態度のドライバーが多く、タクシードライバーまでもがそのような振る舞いをすることがあるが、これらは単に自転車専用道路や歩行者優先の道路政策を行なわず、歩行者や自転車を軽視してきたことに起因するものだと思っている。
「日本列島改造論」を軸に高度経済成長とともに都市化が進む時代では、社会資本整備や住宅の供給など急務の課題であり、経済活動を牽引する車やトラックを中心とした道路にならざるを得ない事情もあったと思う。
しかし現在においても何ら変わらない道路事情、都市計画のあり方には疑問を持つ。規模の大小にかかわらず、空き地や畑などの農地はいつの間にか宅地造成され、建売住宅やマンションへと変わっていく。公園や歩道の拡張や生活道路の整備などに充てられず、たとえ公園ができてもタウン化宅地造成の中にディベロッパーが造成を行い、自治体が資金を出すのは最小限に抑え、少しでも税収を増やすことを優先に考えているとしか思えない。
また日本の行政は縦割りと法令で固められたせいなのか、現場から法律を変えたり、現場のノウハウを国の政策や行政に反映させようとする動きはない。それに他の行政機関と連携したり、情報を共有して改善していこうとするサービスも姿勢もない。これは国民にとってもとても不幸なことだ。ノウハウや過去のデータの共有により、広義の公共の利益の向上に上手く還元できないものかと思っている。
特に警察について、あれだけ取締りなどしていたら、道路や都市計画における改善点やノウハウが行政上活かせることがたくさんありそうに思うのだけど。
行政機関の立場や権益などは関係ない。最低限国民の弱者擁護のサービスと奉仕を期待したいものだ。
今車に興味を持つ若者がいないという。マイカー世代の大人たちは首を傾げ、その購買意欲の無さを心配し、貯金ばかりしても経済が上向かない・・・・と将来を不安視するコメントもメディアに流れたりする。しかしその反面数十万するロードバイクなど惜しげもなく大枚を叩く若者も多い。
成熟化時代の豊かさがここにあるのではないだろうか?
「自転車」カテゴリの記事
- 自転車ブームと日本の道路事情について。(2010.07.11)
- 自転車で有酸素運動にトライ!(2010.07.11)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント